【2024年12月県議会】日本共産党 丸山慎一県議 一般質問
はじめに知事の政治姿勢として「非核平和千葉県宣言」についてうかがいます。
「宣言」は、1994年10月、千葉県議会で全会一致で採択されました。今年はちょうど30周年です。核兵器廃絶と世界の恒久平和をかかげた宣言は、武力衝突が広がっているいまの時代にこそ、必要なものとなっています。知事として、非核平和千葉県宣言を尊重すべきだと考えますが、認識をお聞かせください。
宣言では、「国際社会の理性を信頼し全世界の協力により、戦争という手段によらずに紛争を解決する道を追求するものである」と明記しています。しかし、ロシアがウクライナに攻め込み、イスラエルがガザに総攻撃を仕掛けているいま、政府は外交を投げ捨て、軍備増強一辺倒となっているように見えます。軍事費も、はじめに5年間で43兆円ありきの異常な軍拡が進められています。この政府の姿勢は、「戦争という手段によらず」と記している非核平和千葉県宣言の方向とは相容れないと思いますが、いかがでしょうか。
核兵器でも、戦後79年もたつのにいまだに地球上には、1万2500発もの核兵器があり、そのうち3割を超す3900発が実戦配備されています。その一方で核兵器の廃絶を願う声も大きく広がり、2017年には国連で核兵器禁止条約がつくられ、今年10月には日本原水爆被害者団体協議会=日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。ノーベル委員会は受賞理由として、「原子力爆弾の生存者たちによる草の根運動は、核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示してきた」と述べ、「一つの心強い事実」として、「80年近くの間、戦争で核兵器は使用されてこなかった」と指摘しています。非核平和千葉県宣言に込められた思いも、これと同じではないかと考えますが、知事の認識はどうでしょうか。
今年3月末の被爆者の人数は、10万6825人で、千葉県は1609人となっています。この被爆者の思いをつないでいる「非核平和千葉県宣言」を、30周年にあたって、あらためてすべての県民に届ける必要があります。「県民だより」には毎年全文を掲載していますが、県として、小中高校の児童生徒一人一人に宣言を届けることや、県立公園に宣言全文を記した看板を立てるなど、あらためて周知に努めるべきだと考えますが、お答えください。
次に、新湾岸道路についてうかがいます。
昨年9月の代表質問で新湾岸道路について、60年も前に決められた道路構想に基づく計画であり、経済や人口など時代の変化に対応する必要があることや、三番瀬再生計画への影響は避けられないこと、千葉市の海沿いでは住環境への影響があることなどを指摘しましたが、どれ1つとして具体的な答弁はありませんでした。これでは、住民の納得を得ることなど、到底かないません。
そもそも新湾岸道路がほんとうに必要なのか、あらためて検証が必要です。知事は、渋滞解消、防災対策、国際競争力の向上などを理由に上げていますが、新湾岸道路が完成した場合、広い範囲で交通量に影響がでます。渋滞の解消が目的だというのであれば、どこの渋滞がどのくらい減少するのか、効果を示すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
外環道路の場合、事業化から開通まで30年、40年という年数がかかりましたが、新湾岸道路も同じです。仮に開通するのが30年後とすると、そのときの千葉県人口は、ちばぎん総研の推計では544万人で、いまより84万人、13%も減る見通しとなっています。しかも15歳から65歳のいわゆる現役世代では83万人の減少で、2割以上減ります。そうなれば、交通量も大幅に減り渋滞も緩和の方向に向かうと思いますが、知事の認識をお聞かせください。
国際競争力の向上について常任委員会で、どんな競争力がどのくらい向上するのか聞きましたが、具体的な答弁はなく、「定性的なもの」、つまり数量では表せないものと答えました。こんな不確かな根拠で、1兆円規模の事業費が見込まれ、完成まで数十年もかかる高規格道路の建設に踏み出していいのでしょうか。ひとたび事業が決定されれば、そこから引き返すのは様々な困難が伴います。事業決定の前に、十分な検証と議論を行うべきであり、県民が納得できる根拠を示すべきだと思いますが、お答えください。
新湾岸道路について、現在、来年2月を期限に1回目の意見募集が行われ、その後、ルートや構造について複数案を示すとしていますが、その中に「建設しない」という選択肢はあるのでしょうか。環境影響評価や都市計画決定など、事業化に向けた手続きが行われる前に、「つくらない」という選択肢も県民に示して議論を呼びかけるべきだと思いますが、答弁を求めます。
続けて市川市が進めようとしている人工干潟についてうかがいます。
市の事業は、三番瀬の塩浜護岸前面に土砂を投入して、人工干潟の造成を進めようというもので、まずは、縦50m、幅100mの実験場をつくり、これを足場に広大な人工干潟を造成しようというものです。海域への土砂の投入は国有財産法などによる県の許可が必要であり、県の判断が注目されています。その際、考えなければならないのは、三番瀬再生計画との整合性です。
再生計画では、三番瀬について「多様な自然環境が残され、多くの生物が生息してい」る「ことから、これらを損なうことなく保全していく必要がある」と書かれています。市川市の人工干潟造成で、広範囲に土砂が投入されれば、そこにいる生物は死に絶え、生態系への影響も少なくありません。これは、多様な自然環境を損なうことなく保全していくという再生計画の趣旨に反すると考えますが、県の認識をお聞かせください。
また、再生計画には「海域をこれ以上狭めないことを原則と」することも明記されていますが、人工干潟が造成されれば、その分、海域は狭くなります。ここでも再生計画と矛盾すると思いますが、県の認識はどうでしょうか。
この間、指摘されているのは投入しようとしている土砂の品質です。市川市は、これまで浦安沖などに捨てていた市川漁港の航路の浚渫土砂を人工干潟の造成に使おうとしていますが、この土砂から、バナジウムや水銀、ダイオキシン類などの有害物質が検出されています。基準値を下回っているものの、わずかでも有害物質で汚染されている土砂を、三番瀬の生物多様性を支える最も重要な場所の1つに投下するのは、生態系に悪影響を与える可能性を否定できません。汚染されている土砂の護岸前面への投入に許可を与えるべきではないと考えますが、お答えください。
次に県立高校の再編についてうかがいます。
千葉県教育委員会は県立高校について、10年間で10組程度の統廃合を掲げ、都市部では1学年5学級以下、郡部では3学級以下の学校を、適正規模に満たないとして統合や再編の対象にするとしています。そして現在、船橋豊富高校・船橋北高校・八千代西高校・沼南高校・多古高校・九十九里高校・市原高校の7つの学校をあげ、関係者から意見を聴取するための「地域フォーラム」を開いています。しかし、県教委が適正規模としてあげている学級数は、あくまでも学校経営上の効率性を基準にしたものであって、教育効果を判断する基準にはならないと思いますが、いかがでしょうか。
先日、適正規模に満たなかったり、定員割れしている県立高校を訪問してお話をうかがい状況を見てきました。
ある高校では定員割れで20人程度となっている学級をさらに二つに分けて10人ほどで授業を行っていました。そこでは、先生が一人一人の生徒をゆっくりと回りながらと教えていました。この高校では小学校や中学校のときに不登校だった生徒もいます。外国語を母語とする生徒や家庭環境で不安を抱える生徒、児童養護施設から通っている生徒もいます。「引き算のわからない子や足し算さえわからない子もいる」という話も出されました。こうした現場の様子にふれ、多様な生育環境のなかでつまずいたり、もがいたりしている子どもたちに寄り添う教育になっていると痛感しました。教育長は、定員割れしているからこそ可能なこうした授業風景をご覧になったことがあるでしょうか。あるのであれば、感想をお聞かせください。無ければ、ぜひ一度、見にいっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
こうしたきめ細かな指導は生徒が40人もいたら、なかなかできるものではなく、少人数だからこそ可能になります。ある保護者は「小中と学校に行けなかったのに、高校では行けるようになって良かった」と話しています。各地の地域フォーラムでもPTA会長から、「1クラス11人で先生が丁寧に見てくれる。素晴らしいことだ」との意見が出され、中学校の校長は「私立ではこうはいかない。貴重な受け皿となっている」と話しています。私立高校には私立高校としての役割があります。そして県立高校には県立高校として、どんな生徒であっても学びたいという子どもたちをすべて受け入れる役割と責任があると考えますが、教育長の認識をお聞かせください。
いまやるべきなのは、少人数学級の実現であって、高校統廃合ではありません。統廃合は断念すべきです。お答えください。
次に、県営住宅を中心とした県の住宅施策についてうかがいます。
住生活基本法では、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠で」あり、「低額所得者、高齢者、子どもを育成する家庭等の居住の安定の確保を図る」との基本理念がうたわれています。また、千葉県の住生活基本計画には、住宅に困っている低額所得者に対して安い家賃で住宅を貸し出し、生活の安定と社会福祉の増進に寄与するという県の責務が明記されています。「住まいは福祉」、「住まいは人権」というこの考え方は、県が住宅施策を進めるにあたってきわめて重要だと考えますが、知事の認識はいかがでしょうか。
しかしいま、この基本的立場や役割が十分果たされているとは言えません。
例えば、県営住宅の年4回の募集戸数は毎回200戸前後なのに、応募者数は1000を超え、昨年度の最高倍率は10・4倍にもなっています。その一方で空き家はどんどん増え続け、この10年間で2・5倍にもなっています。求めている県民がいて空き家もあるのに、その空き家を提供しようとしない。こんなもったいない話しがあるでしょうか。空き家を無駄なく活用するため募集戸数を大幅に増やすべきだと考えますが、お答えください。
県が県民の願いに応えられないのは、予算を削っているからです。昨年度、募集可能な空き家戸数は3299戸でしたが、入居を募集したのは882戸、わずか4軒に1軒です。空き家をリフォームして入居募集するための予算は、2020年度には8億4千万円あったのに、24年度は6億4千万円へと大幅に減っています。これでは、ストックの活用などできるはずがありません。減らされた空き家修繕費を抜本的に増額し、県民の要望に応えるべきではないでしょうか。お答えください。
家賃の減免制度も十分に活用されているとは言えません。千葉県では入居者にたいして、政令月収に応じた独自の家賃減免制度を作っていて、多くの入居者から喜ばれています。しかし、政令月収から推測される減免可能世帯は1万1千世帯もあるのに、昨年度末の家賃減免は2598世帯で、2割程度にとどまっています。もちろん、政令月収以外の条件もあるので、残り8割の世帯すべてが減免を受けられるわけではありませんが、それでも申請すれば受けられる世帯が相当数取り残されていると推測できます。制度を周知するとともに、政令月収からみて可能性のある世帯すべてに申請書を送るなど、申請を促す手立てを取るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
これを強調するのは、いまからちょうど10年前に起きた県営住宅での母子無理心中事件があるからです。中学2年の娘と入居していた母親が、家賃の滞納を理由に強制退去命令を受け、執行当日に無理心中を図りました。この母親は減免を受けられた可能性があるのに申請していませんでした。もしも減免されていれば家賃が支払えて、いまも幸せな人生が続いていたかも知れません。県としてこの事実は絶対に忘れてはならないと考えますが、10年たったいま、あらためて県の認識をうかがいます。
県営住宅では、自治会が共益費を回収していますが、入居者の高齢化がすすみ、樹木の剪定作業などもできなくなるなど、自治会活動に支障が出ています。また、空き家は住民の責任ではないのに共益費を徴収することが出来ません。県が共益費を徴収するとともに、県と住民との管理作業の分担を見直すことや、空き家の共益費は県が負担するなど改善すべきだと考えますが、お答えください。
質問の最後に、県が導入を進めている宿泊税についてうかがいます。
千葉県は、研究会や検討会議を設置して宿泊税の導入を検討してきましたが、このほど県の素案が公表され、現在、市町村や事業者への説明会がおこなわれています。宿泊税は、ホテルなどの宿泊客に支払いを求めるもので、素案では1人1泊150円の税額となっています。昨年の県内宿泊者数約2800万人で試算すると年間約42億円の新たな課税となります。国の統計によれば、その6人に1人が県内居住者なので、約7億円が新たな県民負担となります。
そして今回の素案の最大の特徴は、国際条約に基づくもの以外は、いっさいの例外や配慮を認めず、厳しく取り立てるものとなっていることです。すでに実施している東京都では、民宿を課税対象から除外し、宿泊料金1万円未満は非課税としています。大阪府も7000円未満は非課税です。京都市や長崎市では、修学旅行生への課税を免除していますが、千葉県にはその規定もありません。民宿などの小規模事業者も一律150円、宿泊代金が数千円でも数万円でも一律150円、修学旅行生も一律150円、これではあまりにも配慮がなさ過ぎるのではないでしょうか。知事の認識をお聞かせください。
修学旅行は教育の一環として行われているものです。教育の無償化を求める声が広がり、学校給食費や高校の授業料などでも減額や免除の措置が取られてきています。修学旅行も教育の一環として無償化すべきですが、実際には、小学校中学校では5~6万円程度、高校では10万円程度の負担が保護者に課せられています。千葉県の場合、そこに1泊150円とはいえ宿泊税が加算されることになります。これまで宿泊税は、税金や観光振興の観点でしか検討されておらず、教育的側面が欠落しています。県教育委員会として、少なくとも修学旅行など学校教育上必要な宿泊については、宿泊税を免除するよう知事部局に求めるべきではないでしょうか。お答えください。
県の素案では、市町村が、県とは別に宿泊税を導入する場合、単純に上乗せして宿泊者の負担を増やすことにしていますが、福岡県では、その分を県の宿泊税から差し引き、宿泊者の負担が増えないよう配慮しています。千葉県でも、利用者や市町村への負担を考慮して県税から差し引く措置をとるべきだと思いますが、お答えください。
宿泊税導入による約42億円の新たな税収の使い道について県は、観光事業者支援、人材育成、ワーケーション推進、アクセス向上など幅広く上げていますが、42億円という額の積算根拠については、ソフト事業は1事業当たり概ね0・1億円から1億円、ハード事業は1億円から5億円を目安に積み上げたものとしていますが、あまりにも大雑把すぎて、根拠は無きに等しいものと言わざるをえません。しかも半分の21億円は大手を中心にした旅行業者などに補助金として支出することになっています。これでは、宿泊業者、とりわけ中小規模の事業者や地域の活性化につながる保証はないと言わざるを得ませんが、認識をお聞かせください。
なぜ、こういうことになってしまったのか。それは、実際にホテルや旅館を経営している方々の声が反映されていないからです。昨年10月から今年2月まで5回開かれた研究会は、6人の委員のうち旅館やホテルの直接の関係者は1人しかいません。後継組織として4回開かれてきた検討会議も6人中1人だけです。しかも、検討にあたって実施されたアンケートは、2900軒を超える県内宿泊施設から、わずか144件=4%あまりしか回答がありません。先日、ホテル経営者の方々と懇談する機会がありましたが、「経営者が入っていないところで決めないでほしい」「関心が高まってきたいま、もう一度アンケートを採ってほしい」との強い要望が出されました。あらためて、実際に経営している地域の組合などの意見を聞く機会をもうけるべきだと考えますが、いかがでしょうか。また、いまの段階ですべての宿泊施設を対象にアンケートを実施すべきだと考えますが、お答えください。
そもそも「取りやすいところから取る」ようなやり方で県民や千葉県を訪れる人たちに新たな税金を強制し、宿泊業に新たな負担を与えること自体、大きな問題があります。宿泊税は導入を断念して、観光業の支援のための財源は税金の使い方と集め方を切り替えることによって生み出すべきだと考えます。お答えください。
以上で一回目の質問を終わります。