【2023年9月県議会】日本共産党 浅野ふみ子県議 意見書案への討論
日本共産党県議団を代表して、発議案第1号「森林環境譲与税の譲与基準の見直しを求める意見書」に反対の立場から討論を行います。
私たちは、森林の持つ多面的機能を十分に発揮させるうえで、森林の整備保全を促進させることに異議があるわけではありません。
森林環境譲与税は、森林経営管理法に基づき、地方公共団体が新たに行う事務や事業の財源に充てるため、2024年度からは森林環境税を原資として配分されます。
しかし、その森林環境税には大きな問題があると考えています。
最大の問題は、誰が負担するのか、です。間伐などで二酸化炭素の吸収効率を高める森林吸収源対策の費用を「国民に等しく負担を求める」として、一律に年額1000円を個人住民税に上乗せし、住民税・所得割が非課税の低所得者も負担するという血も涙もない税です。2018年度の千葉県内の二酸化炭素排出量は、家庭部門1割に対し、産業部門は6割にも上っているのに、温室ガスを大量に排出している企業への負担はゼロであり、地球温暖化対策を個人だけに押し付けることは許されません。
環境対策で重視される「汚染者負担の原則」から見ても、負担が個人だけというのは妥当な税のあり方とは言えません。国の森林環境税と類似した地方税が、37の府県と横浜市で実施されていますが、いずれも法人にも負担を求めています。
日本の豊かな森林は、文字通り日本にとっての貴重な資源です。国産材の利用と森林の公益的機能の持続的な発揮は、森林・林業者だけの問題ではなく、国民共通の願いであり、喫緊の環境対策でもあります。
「環境税」というのであれば、これまで、わが党が主張してきたように二酸化炭素の排出量に着目した汚染者負担の原則や、温室効果ガスの排出抑制効果も考慮して、事業者・企業にも負担を求めるべきです。
同時に、現在の森林・林業分野の危機的困難は、国の責任が極めて大きいと言わなければなりません。「森林の公益的機能」を強調する一方で、1990年代半ばには、6000億円~7000億円あった林野庁の一般会計予算は、今では3000億円台まで減少してしまっています。予算を削減し、事態の打開を図らずに問題を先送りしてきたことが、今日の危機的状況の原因をつくってきたと言っても過言ではありません。
もう一つの問題は、森林環境譲与税の使い道は「森林整備及びその促進に関する費用」や「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てるとされていますが、具体的な使い道は各自治体の裁量に委ねられ不明確であることです。令和元年(2019年)度から昨年度までの県配分額は総計4億3278万円、市町村支援等推進基金残高は昨年度末で1億6580万円。市町村別の譲与額は2021年度までの総計で16億4118万円、基金積立額は11億9834万円で活用率はわずか27%でした。使い勝手が悪く、これまで配分された譲与税はほとんど積立金となり活用できていない自治体も少なくありません。さらに、交付基準の人口による配分率は3割、林業従事者の2割より高く、私有人工林がない都市部に多額に配分される問題もあります。森林整備に安定的な財源確保策としてふさわしいのかと林業経営者からも疑義が示されています。
交付基準の見直しを求めるというからには、森林を有する自治体が体制や森林整備に活用しやすく、個人の負担増にならないことを強く打ち出す必要があります。しかし意見書案は、その点の曖昧さが拭えません。
最後に、輸入自由化で木材価格が下落し林業経営が成り立たない実態を改善するため、森林整備を重要な課題と位置付け、地球温暖化対策のためのパリ協定の目標達成に向けても、安定的な財源である国の一般会計における林業予算の拡充こそ求めるべきであることを強調し、本意見書への反対討論とします。