県立中学校の歴史・公民教科書を育鵬社とする採択の撤回を求める申し入れ(2015/08/31)

千葉県教育委員会 教育長 内藤敏也 様

    2015年8月31日 日本共産党千葉県委員会/日本共産党千葉県議会議員団

一、千葉県教育委員会は、8月26日の臨時会において、2016年度から県立千葉中学校および県立東葛飾中学校で使用する社会科の歴史的分野と公民的分野の教科書について、育鵬社版を採択した。県教委は、関係者が求めた情報開示に応じることなく、県民の声に耳を傾けず、しかも、現憲法の立場と相容れない教科書の採択を強行したことは極めて重大であり、わが党は、育鵬社版教科書採択の撤回を強く要求するものである。

一、今回の教科書選定は、恣意的で、秘密のベールに覆われたやり方である。これまでは、学校の担当教員や管理職、県教委指導課で構成される「専門調査員会」が複数社の選定候補教科書を推薦し、それを受けて県の選定審議会が選定し、教育長の専決で採択されてきた。
 ところが、一部、日本会議系自民党県議らの議会質問を受け、県教委は、規則を変更し、県立中学校の教科書採択を県教委の議決事項とした。専門調査委員会は「選定資料」の作成のみとなり、選定候補教科書の推薦はなくなった。その結果、事実上、学校現場の教員などの声が十分に反映した教科書の採択が妨げられている。
 わが党は、採択方式の変更に関する文書の提示を求めたが、県教委は、その存在を否定した。およそ教育行政において、極めて重要な教科書採択のルール変更が文書なしで行われるなどということはありえないことである。仮にそれが事実だとすれば、県教委の担当者の考え方次第で、教科書採択のやり方が自由に変更できるということになる。
 県民が情報開示を求めていたにもかかわらず、県教委は、「静ひつな採択環境の維持」を理由に、教科書採択に関する仕組みや日程、「基本的な考え方」をはじめとする県教委が発したすべての関連文書を明らかにせず、県教育委員会臨時会も非公開で行われた。
 これは「教科書の採択に関する情報の積極的な公表に取り組んでいただきたい」とする文科省の各都道府県教育長宛て「通知」(2015年4月7日付)にも反するものである。わが党が「文科省通知は、静ひつな環境を損なう、間違ったものというのが県教委の考えか」と質したところ、県教委担当者は、その考えを渋々認めた。これは極めて重大な答弁である。
 しかも、採択結果については、県民に9月1日まで公表しない旨を再三説明しておきながら、8月26日の県教委臨時会直後に記者発表で明らかにした。これは、県民を欺くものに他ならず、到底容認できない。

一、育鵬社の教科書は、「学識経験者、教育関係者など多くの県民から、先の日本の侵略戦争を美化し、改憲を必要と思わせる立場で編集されている教科書である」との厳しい批判が寄せられている。
 同社の歴史教科書は、日本の侵略戦争を「自存自衛」「アジア解放」のためと描き、「日本の戦争は正しかった」という主張がつらぬかれている。しかし、日本の戦争が誤った侵略だったという判定は、戦後の国際秩序の原点である。また同教科書の記述・立場は、過去の戦争への反省を学校教育、教科書に反映すべきとの立場を示した1982年の宮沢喜一官房長官談話にも反しており、世界で通用しない認識を子どもたちに植え付けるものである。
 同社の公民教科書は、戦前の大日本帝国憲法を高く評価する一方で、現憲法を連合国に押し付けられたものとし、憲法9条を柱とする「平和主義」は「世界的に異例」と否定的に描いている。国民多数が違憲であると指摘し、厳しく批判している集団的自衛権の行使についても「憲法上許される」とする記述に多くのスペースを割いている。
 ほんらい一人ひとりの内心の問題であり、多様である「愛国心」については、ことさら「国家への帰属意識」「国の名誉、発展」などのために行動する気持ちが強調されている。
 県教委は、特異な歴史観を持ち込み、現憲法の立場と両立しない同社の教科書に対するこうした批判を真摯に重く受け止めるべきである。
 教科書は、専門家や教員、住民などによる開かれた討論を通じて、真理真実に即し、魅力あるものにするとともに、その採択は、教育委員会が独断で決めるのでなく、当該の教員や保護者らの意向を反映させるべきである。

一、育鵬社の教科書による教育が行く着くところは、安倍政権の暴走による「海外で戦争する国」づくり、戦争法案強行の危険な企てと一体に、「御国ために血を流す」人をつくる教育の再現である。戦前のような軍国主義教育への後戻りは断じて許してはならない。
 わが党は、憲法を敵視して改憲へ誘導し、日本の侵略戦争を美化する教科書の使用を許さず、今回の県立中学校で使用する歴史と公民教科書の採択結果を撤回するよう重ねて求めるとともに、日本とアジア諸国との「和解と友好」を構築するために「村山談話」「河野談話」で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を誠実かつ真剣に教科書に反映させる努力をつくす決意を表明するものである。

                                      以上